視力低下の症状(4)〔高齢者特有の眼の疾患、加齢黄斑変性(AMD)〕。
加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい AMD)とは、高齢者によく見られる、視野の中心部が阻害される病気です。
良好な視力を得るためには、網膜の中心にある黄斑(おうはん)が正常に働く必要があるのですが、この部分の変化(変性)によって、視野に障害を生じる病気です。
現在、日本ではこの病気が増加傾向にあるとされていますが、正確な発症数の状況などはわかっておりません。
しかしながら、米国では、この加齢黄斑変性(AMD)が中途失明の原因の第一位となっています。
発病の危険は、60歳以上の高齢者において、とりわけ大きいといわれています。
加齢にともなって起きる病気ですので、高齢者に多いことに加えて、以下に述べる「滲出(しんしゅつ)型」は男性に多く、男性は女性の約3倍の頻度で発症がみられます。
その他、喫煙者や家族にこの加齢黄斑変性(AMD)の病歴のある方、血中コレステロールの高い方も、発症のリスクは高くなるとされています。
また、遺伝的な要因が背景にあることが、最近の研究でわかっています。
加齢黄斑変性(AMD)は、「滲出(しんしゅつ)型」と「萎縮型」に分けられています。
「滲出型」とは、網膜の下部から血管が伸びて網膜が腫れたり、出血して黄斑(おうはん)を壊してしまうものです。
症例として多いのはこの「滲出型」であり、特に50歳以上の男性に多くみられる症状であることがわかっています。
また、黄斑部が縮む「萎縮型」は、徐々に組織が痛んで死ぬことにより、長い間かかって視力が低下していきます。
これは老化現象であり、治療法がなく、視力も急には落ちることはありません。
この病気は、網膜の中心にある黄斑部が老化に伴って変性し、視界がぼやけたり、ゆがんで見えたり、暗くなったり欠けたりします。
視野の中心に発生する波状の線や盲点も、症状の一つです。
病気が黄斑部近辺に限定されているならば、通常は見えない部分は中心部だけですが、大きな網膜剥離や出血が続いた場合は、さらに広い範囲で見えにくくなります。
治療法は、進行の度合いや症状によりいくつかに分かれますが、「萎縮型」の加齢黄斑変性(AMD)は老化に伴うものであり、進行が非常にゆっくりしているため、特別な治療は行われません。
残念ながら、特に「萎縮型」において、決定的な治療法はまだ見つかっていませんが、現在、第一次的に選択される治療方法として、進行を抑えるためにレーザーを使用する「光線力学的療法」があります。
これは、「滲出型」の加齢黄斑変性(AMD)が、網膜にむかって新たな病的な血管(「新生血管」という)が発育し、網膜にゆがみが生じることにより起きることから、その破壊を、熱を伴わないレーザーの照射によって行うものです。
いずれにせよこの病気は、早い段階で専門医の診察を受けることがもっとも重要ですが、万一、この病気によって視野の中心部を失った場合でも、視力の低い周辺視野をあきらめずに活用する練習をすることで、困難を伴いながらも文字を拡大して読むことができるようになっているケースも、現実にはありますので、簡単にはあきらめないことが肝要です。
なお、海外の研究事例ではありますが、「定期的な運動により、加齢黄斑変性(AMD)のリスクが最高で70%低下する可能性がある」という研究報告がなされているようです。
ご参考: Ask Doctors 2006年11月8日付 海外医療ニュース
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